まるで役に立たない日記

映画やら本やら日常やら内省やら

同僚A

 

近所の同僚、Aの自宅に遊びにいった。

Aとは以前、最寄りの小さなスーパーで遭遇したことがある。私が入り口近くのパン売り場に立っていたところ、足早に店内に入ってきた薄化粧の彼女は迷いなく納豆1点を手に取り、迅速に会計を済ませ、敬礼とともに私にひと声かけ、私より先に颯爽と帰っていった。時間にして30秒程度の出来事だった。

私は「なんてかっこいい女なんだ…」と思った。私が消費期限内で食べ切れるような食パンをもたもたと吟味しているうちに、彼女はもう目当てのものを手に入れ、帰路についている。あっけに取られながらも感銘を受けたのを覚えている。自然で迷いのない人間は、いつだって見ていて気持ちがいい。

 

そんな彼女とひょんなことからバチェラー5の最終話を一緒にリアルタイム視聴することになり、はじめて自宅にお邪魔した。

暖色の間接照明に照らされた薄暗い1Kの部屋で、至るところで赤いものが目についた。敷かれたラグや巨大なヨギボーやあらゆる小物に至るまで、赤。周囲からは「赤の広場*1」と呼ばれているらしい。

また調味料やら観葉植物やら画材やらレコードプレーヤーやら、彼女に選ばれ、部屋を構成しているひとつひとつのものが、自然と確立されてきた彼女のライフスタイルの発露のように感じられた。ベランダの室外機の上に灰皿が置いてあったが、そこに乱雑に積み上がったタバコの吸い殻でさえ、少し輝いて見えた。

終盤、私の自宅についての話になった。私は「断捨離が趣味でモノが少なく殺風景なため、業者から"ここはオフィスですか?" と聞かれたことがある」「ダイニングテーブルを捨てたため、夫と食事するときは一蘭のカウンターのごとく横並びのデスクで味集中する」という話をしたところ、彼女からは端的に「虚無ハウス」と命名された。キレがある。ちなみにAは私の6歳?下とかである。胆力もちげ〜。

私の部屋が人間らしくなるよう一緒に家具やら雑貨やらを買いにいこうという話をして、解散した。すごく楽しい夜だったので、また集いたい。

 

*1:赤の広場は、1812年にモスクワに侵攻してきたナポレオン率いるフランス軍が「あまりの寒さのために、最終的に引き返すことになった場所」らしい。